トークイベント 加藤賢策(アートディレクター)×上田洋子(ロシア文学)
「デザインによるユートピアとポストユートピア ロシアアヴァンギャルドから現在へ」
2014/10/15@ゲンロンカフェ
10月15日(水)19:00から五反田のゲンロンカフェで「デザインによるユートピアとポストユートピア─ロシアアヴァンギャルドから現在へ」というテーマでトークイベントを開催します。お相手はロシア文学の上田洋子さんです。
1920年代のロシアアヴァンギャルド、とりわけエル・リシツキーと、2000年代に注目されていたカナダ人デザイナーのブルース・マウを軸に紹介しながら話を展開する予定です。それぞれの図版やイメージ等も数多く見ながら上田さんと話をします。
さて
20世紀は「デザイン」の時代でした。デザインによって世界を豊かにする、世界を作り変えるということが信じられていた時代でした。その発想の根源にあるロシアアヴァンギャルドは、写真や映画といったニューメディアの登場、未来派やキュビズムといった新しい芸術運動やロシア革命、第一次世界大戦などが平行して起こる混沌とした時代を背景に1910年代に突如現れました。例えばエル・リシツキーは前述のニューメディアの登場を受け、オールドメディアとしての「本」を再解釈します。そのなかから20年代当時に「途切れなく連続するページ」や「電子図書館」といったキーワードを出していてそのまま現在につながるような発想を数多く持っていました。
20年代後半にはロシア国内で形式主義として批判され運動自体は縮小しましたが、ヨーロッパではバウハウスやデステイルなどに展開し、またそこで学んだひとたちが大戦中にアメリカに亡命したり、国やイデオロギーを超えてばらばらと受け継がれていったのはご存知の通りです。
一方20世紀を経た今、彼らのように楽観的に純粋にデザインについて語ることが難しくなってきます。1980年代からZONE BOOKSやレム・コールハースとの仕事で注目されていたカナダのデザイナー、ブルース・マウは2005年の『MASSIVE CHANGE』という展覧会で、「デザイン」に覆い尽くされた我々の環境を「新しい自然」としてとらえます。「自然」というのはつまり目に見えなくなっているということです。本質的にデザインは不可視であることを求めますよね。例えば、私たちが意識せずに道具やシステムを使えるというのはデザインの力に他なりません。もちろんその中にはバイオテクノロジーや原子力なんかも含まれてきます。20年代初頭、バウハウスのマルセル・ブロイヤーは「人間は将来空気の椅子に座る」と予言したそうです。つまりSFめいたその言葉通りの世界になったのかもしれません。気づけば「デザインによるユートピア」はそんなふうにぼんやりと成し遂げられてしまいました。
「デザインによるユートピアとポストユートピア」というテーマは、そのような時間軸をイメージしています。とはいえ、デーマがテーマであまりに広大すぎるので、今回はブックデザインやその周辺の話をメインにしようかと思っています。リシツキーから考えるデザインは本当に面白いので是非ご参加ください。よろしくお願いします。
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